筋力低下が原因になって膝や股関節が痛むというのは本当か?

この記事の執筆・監修:理学療法士 木村柄珠(フィジカルプラス下関)
姿勢・体幹トレーニング
この記事の執筆・監修:理学療法士 木村柄珠(フィジカルプラス下関)

筋力不足だから関節が痛むのは本当でしょうか?

膝や股関節が痛くて整形外科を受診したときに、
「太ももの筋力が落ちていますね」「お尻の筋肉を鍛えましょう」
と言われた経験はありませんか?

その一言をきっかけに、「もっと筋トレをしないといけない」「痛みが取れないのは自分の努力不足かもしれない」と考えてしまう方がとても多い印象があります。

ところが実際には、きちんとした筋力テストを行わずに「筋力が落ちていますね」と説明されているケースも少なくありません。短い診察時間の中で、詳しく評価する余裕がないという現場の事情もあるのだと思いますが、

病院勤務時代に多くの方の筋力を検査してきた経験から言うと、手術直後や麻痺がある場合を除けば、はっきりとした筋力低下がみられる方は実はそれほど多くありませんでした。

一方で、筋力テストでは十分な力が出ているのに、
「ある方向だけ力が入りにくい」「動かし始めだけ妙にぎこちない」
といったアンバランスさがみられる方はたくさんいます。

つまり、「筋力が弱い=関節が痛い」とは限らないということです。

筋力だけでなく「筋肉の硬さ」や「体の使い方」にも目を向ける

関節に痛みがある方を丁寧にみていくと、多くの場合で

  • 異常に硬くこわばっている筋肉
  • ほとんど張りの感じられない筋肉
  • 「ここだけうまく力が入らない」という筋肉

といった筋肉同士のバランスの乱れがみられます。

実際に痛みの出る場所をたどっていくと、
ある筋肉のお腹(筋肉の厚みのある部分)を軽く押しただけで、
「いつもの関節の痛みと同じ感じがする」という場所が見つかることもよくあります。

その部分をゆっくりほぐしたあとで立ち上がったり歩いたりすると、
「関節そのものではなく、筋肉のほうがかなり影響していたのかもしれない」と感じられることも少なくありません。

このように、関節痛だと思っていても、実際には周囲の筋肉の硬さや使い方が大きく関わっているケースが多いのです。

特に、立つ・歩くといった動作で体重がかかる股関節・膝関節・足関節は、もともとの骨格や生活習慣によって動き方がある程度決まってしまいます。同じ動き方を長年くり返すことで、特定の関節や筋肉だけに負担が集中し、ちょっとしたきっかけで痛みが表に出てきます。

「筋力が足りないから痛い」と決めつけてしまう前に、
筋肉の状態や体の使い方にも目を向けてみることがとても大切です。

力の入れ方を変えると、関節への負担も変わる

関節を守りたいのであれば、筋肉をガンガン鍛えるよりも、
「痛みの出やすいところに、できるだけ負担をかけない使い方」を覚えるほうが近道になることが多いです。

真面目な方ほど、「言われたから」「頑張らないと」と筋トレに力を入れすぎてしまい、かえって体のクセを強めてしまうケースも目立ちます。ここでは、よくみられる例を2つご紹介します。

1.膝が痛くて、立ち上がりで手すりに頼りすぎる場合

膝が痛いときに手すりを使うこと自体は悪いことではありません。問題になるのは、腕の力だけで体を引き上げるように立ち上がってしまう場合です。

この立ち上がり方を続けていると、本来しっかり使いたい

  • お尻の筋肉
  • 太ももの裏側の筋肉

がほとんど働かなくなり、代わりに太ももの前側の筋肉ばかりを使うようになります。すると、膝関節の前側にかかる負担はどんどん大きくなり、痛みが長引きやすくなります。

手すりを使うときは、手で強く引っ張らず、上体をしっかり前に倒してからお尻と太ももの裏側で立ち上がるイメージを持つと、膝への負担はかなり変わってきます。

2.股関節が痛くて、杖を強く握りしめて歩く場合

股関節の痛みをかばおうとして杖に体重を預けすぎると、

  • 手首や肩が痛くなる
  • 体が常に片側に傾く
  • お尻の筋肉が左右のバランスよく使えない

といった状況になりやすく、結果的に股関節や腰への負担も増えてしまいます。

基本的には、T字杖は「痛みのない側の手」で持つのが原則です。痛む側の手で持ってしまうと、痛みをかばうつもりが反対に負担を増やしてしまうこともあります。

このように、どこに力を入れて、どこは頑張りすぎないほうがいいのかが整理できると、関節へのストレスは大きく変わります。

「筋力が落ちていますね」と言われたときに確認したいこと

もし医療機関で

「筋力が弱いから痛いんですよ」
「もっと鍛えないとよくなりませんよ」

と言われたら、次のようなポイントを質問してみても良いと思います。

  • どの筋肉の筋力が弱いと考えていますか?
  • どのような検査やテストで筋力低下を判断しましたか?
  • その筋肉を鍛えることで、どの動きが楽になるイメージでしょうか?

もし明確な説明や、実際の筋力テストがない場合は、
「本当に筋力だけが原因なのか?」と一度立ち止まって考えてみることをおすすめします。

医療機関そのものを否定したいわけではありません。ただ、

「筋力が落ちているから痛い」という説明だけでは、関節痛の全体像を十分に説明しきれていないことも多い、という点は頭の片隅に置いておいていただければと思います。

実際の現場では、あまり名前の知られていない小さな筋肉や、姿勢・歩き方のクセを整えていくことが大切になるケースが多いと感じています。

まとめ:筋力だけに原因を求めないでください

関節の痛みは、「筋力が足りないから」と一言で片づけられるものではありません。

  • 筋肉の硬さやアンバランス
  • 体の使い方・力の入れ方のクセ
  • 姿勢や歩き方、生活習慣

こういった要素が重なり合って、今の痛みにつながっていることがほとんどです。

もし「筋力が弱いから痛い」と言われて落ち込んでいる方がいたら、
ご自身を責める前に、本当に必要なのは「筋トレ」なのか?それとも「体の使い方を見直すこと」なのか?を一度整理してみてください。

下関近郊で関節の痛みや体の使い方について不安がある方は、
フィジカルプラスでもご相談を承っています。

▼ 痛みや動きのお悩みは、ひとりで抱え込まずご相談ください

現在のお身体の状態や生活状況をうかがいながら、
理学療法士が今後の過ごし方やサポートの選択肢をご一緒に整理します。

※ご相談のみのご利用も歓迎しています。
※こちらから無理にご案内することはありませんので、ご安心ください。

▼ フィジカルプラスへのアクセス(下関市長府土居の内)

下関市長府土居の内の整体 フィジカルプラス アクセスマップ 理学療法士

山口県下関市長府土居の内
画像をタップするとGoogleマップで経路案内を開始します

理学療法士(Physical Therapist)。
病院勤務時代には、延べ4万人以上のリハビリテーションに携わる。現在は「フィジカルプラス下関」代表として、痛みや動きにくさと向き合いながら生活や競技を続けていくためのコンディショニング支援を中心に活動。地元の中高生からプロアスリートまで幅広くサポートし、山口県スポーツ協会認定トレーナーとして10年以上国スポにも帯同している。

Heiju Kimuraをフォローする
姿勢・体幹トレーニング