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股関節疾患の保存療法をするにあたって考えたいこと

この記事の執筆・監修:理学療法士 木村柄珠(フィジカルプラス下関)
股関節の痛み・臼蓋形成不全
この記事の執筆・監修:理学療法士 木村柄珠(フィジカルプラス下関)

リハビリには効果がない?と思ってしまう前に知っておきたいこと

臼蓋形成不全きゅうがいけいせいふぜんや変形性股関節症などの診断を受けても、手術の前の段階で、股関節に合わせた専門的なリハビリや運動指導を受けられる機会は、ここ下関ではまだ多くありません。実際には、手術後になってから初めて本格的にリハビリに取り組む、という流れになりやすいのが現状です。

仮に術前にリハビリを受けられたとしても、内容が「手術後を見据えた全身の基礎トレーニング」にとどまり、「できるだけ手術のタイミングを遅らせたい」「可能であれば未手術のまま日常生活を送りたい」という視点で細かく組まれていることは多くありません。

実際にお話をうかがうと、運動内容が書かれたプリントを渡されて、あとは自己流でなんとなく続けていたという方がほとんどです。このような状況では、「リハビリをしているのに変わらない」「何を目的にやっているのか分かりにくい」と感じてしまっても不思議ではありません。

臼蓋形成不全きゅうがいけいせいふぜんのように、もともとの骨のかたちや骨盤の傾きなど「生まれ持った骨格」が関わる股関節の問題では、数週間で目に見えてはっきりとした変化が出るとは限らず、ある程度の時間が必要になることが多いです。その一方で、骨格の特徴を踏まえたうえで、姿勢・歩き方・股関節まわりの筋肉の使い方を少しずつ整えていくと、日常生活での動きやすさが変わってくる方も少なくありません。

「リハビリには意味がない」と決めつけてしまう前に、まずはご自身の骨格や股関節の状態に合わせた内容になっているかどうかを、一度立ち止まって振り返ってみることが大切です。

安易に「プールで歩けば大丈夫」と思わないために

プールでの歩行は、水の浮力によって体重が軽くなるため、膝や股関節にかかる荷重を抑えつつ全身を動かせるという点で、リスクをおさえながら取り組みやすい方法のひとつです。実際に多くの医療機関でも提案されています。

ただし、臼蓋形成不全きゅうがいけいせいふぜんや股関節痛がある場合、「水の中でたくさん歩けば安心」とは言い切れません。もともとの股関節の向きや可動性に問題があると、水中でも陸上と同じような“良くないクセ”のまま歩いてしまうことが多いからです。

時間や費用をかけて通っていても、股関節の使い方そのものが変わらないままでは、思っていたほどの変化を感じにくいことがあります。プールの運動自体が悪いわけではなく、

  • 水中でどのように足を出すのか
  • どこに体重をかけて歩くのか
  • 股関節をどの範囲まで動かしてよいのか

といったポイントを、股関節の状態に合わせて確認しながら行うことが、とても大切になります。

自己流の筋トレや運動で、かえって痛みを強くしてしまうことも

股関節は、人間の関節の中でも動く範囲が広く、周囲には多くの筋肉がついています。そのぶん、筋肉の使い方のクセが痛みに影響しやすい関節でもあります。

医療機関で「筋力が弱いですね」と言われ、「とにかく鍛えれば良い」と自己流でトレーニングを頑張ってしまう方も少なくありません。しかし、

  • もともと負担がかかりすぎている筋肉をさらに酷使してしまう
  • 股関節まわりの一部の筋肉ばかりに力が入り、バランスが崩れる
  • 可動域が狭いまま強い負荷をかけて、関節の動きそのものを固くしてしまう

といったことが重なると、頑張ったぶんだけ痛みが増してしまうこともあります。

筋トレや体操のあとに股関節が余計に痛む場合は、単純に「もっと鍛えればいい」という話ではなく、やり方そのものを見直すサインと考えてください。回数や負荷を増やすよりも先に、

  • どの筋肉に力を入れているのか
  • どの方向に股関節を動かしているのか
  • 呼吸や姿勢が崩れていないか

をチェックし、必要であれば一度専門家にフォームを見てもらうことをおすすめします。

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杖の使い方ひとつでも、股関節への負担は変わります

股関節の痛みが強くなると、医師から杖の使用を勧められることがあります。杖は、使い方が合っていれば股関節の負担を和らげてくれる頼もしい道具です。

ただし、痛みが怖いあまりに杖に頼り過ぎてしまうと、

  • 杖を持つ側の肩・肘・手首に強い負担がかかる
  • 上半身を大きく傾けるクセがつき、歩き方がいびつになる
  • 本来使いたい股関節まわりの筋肉が働きにくくなる

といった状態になり、たくさん歩いても股関節が「楽な歩き方」を覚えにくくなってしまいます。

実際には、

  • 杖を持つ手が痛む側と同じになっている
  • 杖の長さが合っていない
  • どのタイミングで杖を出すのかよくわからないまま使っている

といった方が多く、「とりあえず持っているけれど、きちんと教えてもらったことはない」というケースも少なくありません。

基本として覚えておきたいのは、痛む側と反対の手で杖を持つということです。そのうえで、歩幅やタイミングなどは、股関節の状態に合わせて丁寧に調整していく必要があります。

「手術をしないこと」だけにとらわれず、落ち着いて選択肢を整理しましょう

理学療法士としての経験から、手術によってしか変えにくい種類の痛みがあることも事実だと感じています。同時に、手術をしても歩き方や股関節の使い方が整わないままでは、痛みや違和感が残ることも少なくありません。

「どうしても手術は避けたい」と強く思うあまり、焦って自己流のリハビリや筋トレを増やしてしまうと、かえって状態がつらくなってしまう場合もあります。大切なのは、

  • 今の股関節の状態(骨の形・可動域・痛みの出方)
  • 生活の中でどれくらい困っているか
  • どのくらいの期間で何を目指したいのか

といった点を整理し、その時点で取れる選択肢を冷静に並べてみることです。必要に応じて、主治医と相談しながら方針を決めていきましょう。

臼蓋形成不全きゅうがいけいせいふぜんのリハビリは、もともとの骨格や生活スタイルにも影響されるため、変化が出るまでに時間がかかることもあります。それでも、股関節の可動性を保ちつつ、姿勢や歩き方、筋肉の使い方をコツコツ整えていくことで、日常生活の中で「少し動きやすくなってきた」と感じられる場面が増えてくる方は多い印象です。

未手術の方も、手術後の方も、がむしゃらに股関節まわりだけを鍛えたり、プールでひたすら歩くことが、そのまま近道とは限りません。ある程度の可動性を確保したうえで、タイミングと負荷のかけ方を見極めながら進めることが、リハビリの良さを引き出すポイントになります。

「続けているのに変わらない」と感じているときほど、焦りが強くなりがちです。一度立ち止まって、今のやり方がご自身の股関節の状態に合っているかどうか、一緒に整理してみませんか。

下関近郊で臼蓋形成不全きゅうがいけいせいふぜんや股関節の痛みでお悩みの方は、症状が強い場合にはまず医療機関で相談したうえで、リハビリや運動の進め方に不安があれば、理学療法士による個別相談もご活用ください。

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股関節についてもう少し詳しく知りたい方は、専門ページもあわせてご覧ください。

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理学療法士(Physical Therapist)。
病院勤務時代には、延べ4万人以上のリハビリテーションに携わる。現在は「フィジカルプラス下関」代表として、痛みや動きにくさと向き合いながら生活や競技を続けていくためのコンディショニング支援を中心に活動。地元の中高生からプロアスリートまで幅広くサポートし、山口県スポーツ協会認定トレーナーとして10年以上国スポにも帯同している。

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