大事にしすぎは逆効果?人工骨頭置換術後に「これだけは避けたい」過度な安静のリスク

この記事の執筆・監修:理学療法士 木村柄珠(フィジカルプラス下関)
人工関節手術後(股関節・膝)
この記事の執筆・監修:理学療法士 木村柄珠(フィジカルプラス下関)

\術後の「動くのが怖い…」を一人で抱えないで/

歩き方・杖の使い方・家での過ごし方を、今の状態に合わせて一緒に整理できます。ご相談だけでも大丈夫です。

「手術した足が脱臼したらどうしよう…と怖くて動けない」
「退院のときに“無理しないで”と言われたから、家ではなるべくじっとしている」

人工骨頭置換術(または人工股関節全置換術)を受けたあと、こうした不安を抱える方はとても多いです。手術直後は、たしかに注意が必要な時期があります。

ただ、理学療法士として術後の方をたくさん見ていると、実際には「脱臼」そのものよりも、守りすぎて動かなくなる(過度な安静)ことで困りごとが増えるケースが目立ちます。

この記事では、一般的に行われている後方侵入による股関節の手術後に必要以上に怖がりすぎないために、①避けたい姿勢の整理、②動かなさすぎのリスク、③安全に動くためのコツを、やさしくまとめます。
※内容は一般的な情報です。運動や生活動作の判断は、主治医・担当医療者の指示を最優先にしてください。

1. まずはおさらい:本当に「避けたい姿勢」は意外と限定的

脱臼が心配だと、「何をしても危ない気がする…」となりがちですよね。でも大切なのは、“避けたいポイント”を絞って覚えることです。

注意する動きは、手術の進入法や医師の方針、術後の時期によって変わります。そのうえで、一般的に言われやすいのは、ひとつの動きより「組み合わせ」によることがほとんどです。

よく注意されやすい動き(例)

  • 深く曲げる+内側に寄せる(深い前かがみ、足を組む、低い椅子で膝が上がりすぎる など)
  • 内側にねじる(方向転換で足先だけが内に入る、内股の姿勢が続く など)
  • 深く曲げる正座でお辞儀をする・正座からの立ち上がり

ついつい無意識にやってしまいがちな動きをあげてみましたが、ここを必要な範囲で押さえられれば、「何をしても脱臼する」という状態ではありません。まずは“怖さの対象をぼんやりさせない”だけでも、気持ちが少しラクになります。

2. 本題:実は怖い!「過度な安静」が引き起こしやすい3つのリスク

「脱臼が怖いから」と座りっぱなしになったり、家の中でもほとんど歩かなくなったりすると、別の困りごとが出やすくなります。とくに多いのが、次の3つです。

リスク① 筋力が想像以上に落ちる(いわゆる“廃用症候群”)

筋肉は、使わないと本当に早く弱くなります。術後は手術側をかばいやすいので、お尻・太もも・体幹の「支える力」が落ちやすいんですね。

その結果、ふらつく→転びそうで怖い→さらに動かないという流れになり、生活がどんどん縮こまりやすくなります。

リスク② 股関節まわりがこわばる(動きが小さくなる)

関節は“動かしている範囲”の中で滑らかさが保たれます。動く量が減ると、筋肉や関節まわりの組織が硬くなりやすく、立ち上がりや歩き出しが重く感じやすくなります。

リスク③ 痛み・重だるさの悪循環

動かない時間が長いと、血流が落ちて重だるさや張りが強くなりやすいです。すると「痛いから動かない」になり、動かない → 重い → さらに動かないのループに入りやすくなります。

さらに、術後は傷のまわりの組織が修復していく過程で、同じ姿勢が続いたり動きが小さすぎたりすると、傷の周辺がこわばってくっつきやすい状態(癒着が起こりやすい状態)になることもあります。そうなると、動かし始めのつっぱり感や違和感が出やすくなり、「やっぱり動くのが怖い…」と感じてしまう方も少なくありません。

術後の不快感が長引くときは、傷そのものだけが原因ではなく、こうした血流やめぐりの低下、そして周辺組織のこわばり(癒着が起こりやすい状態)が重なっていることもあります(感じ方や回復のスピードには個人差があります)。

\まずは家で少しずつ進めたい方へ/

「何をどの順番でやればいい?」が分かると、不安はグッと減ります。自宅で取り組みやすい内容をまとめたPDFも用意しています。

3. あなたは大丈夫?「大事にしすぎ」のサイン

ご自身の生活を振り返ってみてください。次の項目に当てはまるものはありますか?

  • 用事がない限り、ほぼ一日中家の中にいる
  • 痛みは強くないのに、不安だけで杖を手放せない
  • 立つとき・歩くとき、手術側にほとんど体重を乗せていない
  • 家族に「びっこを引いているよ」と言われる
  • 方向転換で足先だけが内側に入りやすい

当てはまるからといって「ダメ」という話ではありません。むしろ、ここに気づけた時点で次の一手が打てます。ポイントは、怖さをゼロにするより、怖さと折り合いをつけながら“安全に動ける形”を作ることです。

4. 手術した股関節を守りながら、安全に動くためのポイント

「じゃあ、痛くても無理に動くべき?」という話ではありません。大切なのは、正しく、ほどよくです。今日から取り入れやすいコツをまとめます。

ポイント① まとめて頑張らず「小分け」で動く

いきなり散歩を長時間…よりも、家の中で3〜5分を複数回のほうが安全で続きやすいです。

  • トイレのついでに部屋を一周する
  • 座りっぱなしを避けて、1時間に1回は立つ
  • キッチンまで行ったら、帰りは姿勢を意識してゆっくり

ポイント② 目安は「その場」より「翌日」

動いた直後に少し張る感じが出ることは、術後では珍しくありません。チェックしたいのは翌日です。

  • 翌日に痛みや重だるさが“上乗せ”されていないか
  • 歩き方が崩れっぱなしになっていないか
  • 寝起きの動き出しが明らかに辛くなっていないか

もし翌日に悪化が強いなら、量ややり方を少し戻して調整しましょう。判断が難しい場合は、専門家に一度見てもらうのが安心です。

ポイント③ 方向転換は「足先だけでひねらない」

怖さが強い方ほど、無意識に体をひねって足先だけが内に入ることがあります。方向転換は、小さく踏み替えて“体ごと向きを変える”意識が安全につながります。

ポイント④ 杖は「卒業」より「使い方の質」

杖は悪者ではありません。ただ、長く頼りすぎると歩き方が片寄る方もいます。次の点を一度チェックしてみてください。

  • 杖の高さが合っているか(立った状態で腕時計くらいの高さと覚えておきましょぅ)
  • 杖側へ体が倒れすぎていないか(T字杖は軽く持つだけにしましょう)
  • 術側に体重を乗せない歩き方をしていないか?(体重かけて大丈夫です)

「どれが当てはまるのか自分では分からない…」という方は、短時間のチェックだけでも方向性が見えやすくなります。

5. まとめ:手術はスタート。守るために「動ける体」を作ろう

「脱臼が怖い」という気持ちは自然です。ただ、怖さから動けなくなると、筋力低下・こわばり・痛みや重だるさのループに入りやすくなります。

避けたい姿勢を必要な範囲で押さえたら、次は安全な形で、少しずつ活動量を戻す。これが術後の不安を減らす近道になりやすいです(回復のスピードには個人差があります)。

\直接チェックして進めたい方/自宅で進めたい方

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理学療法士(Physical Therapist)。
病院勤務時代には、延べ4万人以上のリハビリテーションに携わる。現在は「フィジカルプラス下関」代表として、痛みや動きにくさと向き合いながら生活や競技を続けていくためのコンディショニング支援を中心に活動。地元の中高生からプロアスリートまで幅広くサポートし、山口県スポーツ協会認定トレーナーとして10年以上国スポにも帯同している。

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