昔ながらの腹筋運動は腰を痛める?
先日、日本バスケットボール協会の記事(朝日デジタル)でも出ていましたが、昔ながらの上体を起こす腹筋運動は腰痛の原因となるためやめさせるという動きがあるとのことでした。
理学療法士から見ると、上半身を起こすための腹筋運動には、腰が曲がりやすくなり、股関節の動きが鈍くなりやすい要因があることに注意する必要があります。
特にスポーツをしている人は、この点に特に注意する必要があります。
これについては、様々な意見がありますが、一般的に考えると、椎間板に大きな負担がかかること、上半身を起こすとで腹筋以外の筋肉も強く働き、正確に腹筋を鍛えられないことがあると考えられます。
ただし、競技特性などによっては、必要な運動もありますので、盲目的にやると駄目というわけではないことを知っておく必要があります。
何故上体を起こすと腰が痛くなるのか?
40代から上の年代では腹筋というと上体を起こすやり方を学生時代にたくさんやってきたと思います。やればやるほど腰が痛くなった経験がある方もいるのではないでしょうか?
現在でもクラブチームなどのトレーニングでやっているところもあり、目的がちゃんとはっきりしていれば良いのですが、実際には腹筋を鍛えるためというなんともはっきりしない理由でなんとなく続けているように感じています。
上体を起こすと働く筋肉はどの筋肉?
元々は腹筋を鍛えたくて上体を起こす運動を行っているのですが、やり方によって実際はお腹に力が入っていないことが多々あります。
まずは両膝を立てて、パートナーに足を固定してもらい上体を起こしていくと肩甲骨が浮くまでは上部の腹直筋が強く働きますが、それ以降は腸腰筋や大腿四頭筋などが強く働き始めます。
元々腸腰筋や大腿四頭筋は骨盤を前傾(前に傾ける)作用があるため、ここが強く働く運動を繰り返すと腰の反りが非常に強くなりがちです。
またこれでは本来の目的である腹筋群にきちんと収縮が入りません。
このようなカラダの使い方では痛みの原因となりやすいアウターマッスルに過剰な緊張が生まれ、腰だけでなく様々な部分に負担がかかり痛みの原因になったり、スポーツ動作の質をかえって落としてしまうことにもなりかねません。
きちんと腹筋群に刺激を入れてやるとすれば下の画像のように肩甲骨が軽く浮くくらいまでにしましょう。このくらいで十分に腹筋には刺激が入ります。
高齢者や体力に自身がなければ頭を浮かせるだけでも大丈夫です。
ただこのやり方では下部の腹直筋については刺激が入らず満遍なく、腹筋を鍛えることは出来ているとはいえません。
腰痛の予防を考えたときには下部の腹直筋の収縮を促すことは必須となります。
下部の腹直筋の鍛え方
下部の腹直筋を鍛える方法は様々ですが、腰痛予防の場合は画像のようにカラダを斜めに起こし同時に腹斜筋を働かせるとより効果的になります。
ただここでは腹直筋をメインにと思いますので以下の画像のように両肘をついて股関節と膝関節を90度に保ち、一旦膝を胸に寄せるようにします。
寄せたら今度は両膝を伸ばしながら床につかないようにできる限り下ろします。
慣れるまでは10秒程度静止するようにして構いません。
この時、膝はしっかりと伸ばさないと効果が落ちます。このように行うと腰が余計に反ったりすることなく比較的安全に下部の腹筋群を鍛えることができます。
この運動が難しい場合は以下の姿勢をとり、片足だけをを床から少し浮かせるようにして膝を伸ばして10秒程度止める運動を交互に繰り返しましょう。
これまで挙げたように気をつけて腹筋運動を行ってみると、お腹にすごく力が入ったということがよく分かるはずです。
スポーツ活動を行っている方は今一度腹筋運動について再考して見て頂ければと思います。
腹筋運動を行う回数や頻度
日頃運動をしていない方や腰痛がすでにある方では多くの回数をこなすことはオススメしません。
勢いをつけたりすると余計に腰が痛くなってしまうため、基本的には10秒ずつくらい静止するようにしましょう。
※静止している間は呼吸を止めずに出来る限り普通に呼吸をすることに努めましょう。
※おかしな痛みが出たらすぐに中止して下さい。
各運動を10秒×3セットずつ一週間で2回から始めて2週間したらセット数を少しずつ増やしていくと体に負担が少なくなります。
あくまでも腰痛予防のためなので、沢山やる必要はありません。
また、アスリートの方では当てはまらないのでご注意下さい。
まとめ
以上腰痛予防のための腹筋運動について紹介してきましたが、これらはほんの一部の運動で、その他にもストレッチや日常生活の中で考えてほしい沢山の要素が必要です。
また実際には今回挙げた腹筋運動を継続することで股関節周囲の関節可動域も向上しやすくなります。ストレッチをしてもうまく伸びない方は腹筋運動を行ってから行うと少し伸びやすくなるはずです。
今回紹介したものは特にスポーツを行っている方で体力に自身があるような方で腰痛があると、有効な内容です。
一般の方でも腰痛があり、腹筋運動をしている方にはよくある間違いなので気をつけてみて下さい。
スポーツコンディショニングにて承ります