筋トレの専門家と医療の専門家のアプローチの違いを考えてみる
医療機関で臼蓋形成不全などの股関節疾患の診断を受け、運動を勧められて筋力トレーニングを始める方がおられます。
例えば、スポーツジムなどに通い、専属のスポーツトレーナーに指導を受ける方もいれば、プールなどで自分自身で運動を行うことを選択する人もいると思います。
ただし、臼蓋形成不全や股関節痛がある場合、様々な制約があるため通常の筋力トレーニングとは異なるアプローチが必要となることがあります。
その中には、関節の可動域制限を考慮したトレーニングも含まれます。
股関節周囲の筋力向上は重要ですが、股関節機能の低下がある場合には、筋力トレーニングと機能面を同時に考慮したトレーニングが必要となります。
スポーツジムでトレーニング指導を行う専門のトレーナーたちは、筋力トレーニングに精通しているかもしれませんが、股関節疾患、股関節の状態や可動域の制限についての専門知識を有しているかどうかは疑問が残ります。
では医療の専門家の場合はどうでしょうか?
医療の専門家の場合、ここでは仮に理学療法士と仮定すると、まずは痛みの原因や機能低下、関節の状態などを確認し治療的意味合いも含んだ、適切な筋力トレーニングプランを立てることが可能になります。
実際に筋力をつけるというイメージよりは上手く動かせるようにすることを重視します。もちろん筋力的に不足している場合は合わせて筋トレも行います。
臼蓋形成不全や股関節痛がある場合、通常の筋力トレーニングを繰り返し行うことで急激な関節可動域制限を生じる危険性があります。
このように専門とする領域はそれぞれ違うため、股関節疾患があればやはり医療の専門家に相談することが痛み解消の近道になります。
筋トレを始めたら股関節の痛みが強くなった経験がありませんか?
特に関節に問題のない方では問題になりませんが、股関節に問題を抱えている方で、筋力トレーニングを行うことによってかえって関節可動域の制限が強くなったり、痛みが取れなくなった経験がありませんか?
痛みが取れない場合の多くはトレーニングのやり方に問題があるからでトレーニング量が足りないということではないのです。がんばりやさんほど陥る良くない状況ですのでくれぐれもお気をつけください。
間違った筋トレによって一度狭くなってしまった股関節の関節可動域の制限を再び広げるためには熟練の理学療法士がリハビリにあたっても相当な苦労が伴います。
ハッキリと伝えておきますが変形性股関節症や臼蓋形成不全の方で、筋トレを初めて関節に硬さを感じたらすぐにやり方を変えるか、筋トレ自体をやめましょう。
以下、股関節周囲のトレーニングや筋トレが正しく出来ているかを確認していきましょう。
股関節の筋トレやリハビリの効果を判断するには?
どうにかして未手術で股関節の痛みを取り除きたいと、筋トレや自主的なリハビリを一生懸命に頑張っているのに徐々に「靴下がはきにくい」「爪が切りにくい」などと日常生活において関節可動域の制限を強く感じていませんか?
筋力トレーニングやプールでのウォーキング、杖をついて股関節に対する負担を減らそうとしているなど様々なことを継続していても「股関節の可動域が狭くなった」と感じたら今のやり方を見直す時期になっていると判断してください。
股関節周囲の筋トレにこだわりすぎていませんか?
一般の方は股関節に対するトレーニングと聞くとどうしても「筋力をつける」ということに意識が向いてしまいますが、このような考え方は非常に危険で一生懸命でまじめな方ほど関節可動域の制限を強くしてしまうことがあります。
理学療法士としての経験から言うと関節の制限がまだ強くない、股関節周囲の筋力についてはほとんど問題ない場合は、腹筋群を中心とした体幹をコントロールする運動を継続して行うことで股関節機能は徐々に向上していくことが多いです。
他にも筋力以外の足の付き方、現在の膝やつま先の向きの修正するためのトレーニングを進めたほうが良い結果を得られることが多いので筋力をつけることに固執しすぎないように気をつけましょう。
変形が強く関節可動域の制限が強い場合は筋トレよりもまずは関節可動域の確保が大切になりますので中途半端に筋トレなどをされている方がいたらその場合はすぐやめて医療機関に相談しましょう!
以下は膝について書いていますが、股関節痛の方にも有効な運動になりますので御覧ください。
私個人の意見ですが、術後の方を除いて、筋力トレーニングを中心に行うことは臼蓋形成不全や変形性膝関節症の方では筋力の問題は少ないためあまり意味がないと考えています。
筋力より、筋肉のバランスに目を向けていきましょう
重要なことは日常生活で「負担のかかっている筋肉を使いすぎないこと」で、トレーニングなどで単純に筋力をつけようとすると、既に負担がかかっている筋肉に更に負担が増えることで痛みや関節可動域に問題を起こし調子が悪くなっていくのです。
股関節周囲には非常に沢山の筋肉がついていますし、それらの一つ一つを意識して動かすことは誰にとってもほぼ不可能です。
実際には体の表面にある大きな筋肉くらいしか意識できないのではないかと思います。
臼蓋形成不全や変形性股関節症で大切なことはこれら股関節周囲の筋肉を体幹機能とうまく連動させてバランス良く使うことであると思います。
股関節に問題があると、うまく使うことが難しい筋肉が出てきます。これらの筋肉のバランスを考えるとやはり専門家の力が必要となります。
筋力より股関節周囲の筋力のバランスを考えられるように知識を増やしていきましょう。
みなさんが悩みやすい歩行については力を入れるタイミングが大切です。
普段はあまり意識しない歩行時の力の入れ方ですが、実際には下肢の筋肉は力を入れるタイミングが難しく、歩行の際にかかとから足をつくことを意識しすぎたりすると足部のコントロールがうまくできず、ぎこちない歩き方になります。
術後すぐの方に特に多いのですが、最初が肝心でとにかく歩けることを意識しすぎないことです。大切なのは歩くときの力を入れるタイミングです。かかとからつこうと意識しすぎて常に足に力が入っていたり、足が棒のようになってぎこちない動きになったりすると見た目にも違和感のある動きになります。
タイミングを合わせるためには、やはり筋力よりも筋肉のバランスが必要でそのためにはやはり専門家の力が必要になります。残念ながら自己流でうまくいく人は殆どいないでしょう。
股関節痛の方で気をつけたいこととして、かかとから足を無理につこうとしない、足を降り出すときには膝から下に余計な力を入れない、足を不必要に開いたまま歩かないなどがありますがこれらの動きは筋トレを無理に行うことで余計に強くくなってしまいますので注意してください。
まとめ
股関節疾患を抱えた方が、スポーツジムや個人的な取り組みを通じて筋力トレーニングを行うことがありますが、通常のトレーニングとは異なる配慮が必ず必要になります。
理学療法士などの医療の専門家は関節可動域の制限や痛みの要因を考慮し、適切なトレーニングプランを立てることができるため筋トレをするにしても安全性の高いものを提供できます。
股関節疾患について知識のない方が行う筋力トレーニングは関節に問題を引き起こす可能性があり、その後のリハビリを難しくします。
股関節が痛む時は、安易に筋トレをやるのではなく、現状をしっかりと把握して今現在の痛みは以前と比べてどうなっているか?段々と悪くなっていないか?など繰り返し確認し、今のやり方を変えてみることも必要です。
歩き方についても注意が必要ですが、理学療法士でも経験が少ない方だと歩き方については指導が不十分になることもあります。
フィジカルプラスでは理学療法士として股関節疾患の経験豊富です。