膝の機能性を考えないで行う大腿四頭筋の筋トレはかえって膝の痛みをつくる?

この記事の執筆・監修:理学療法士 木村柄珠(フィジカルプラス下関)
膝の痛み・変形性膝関節症
この記事の執筆・監修:理学療法士 木村柄珠(フィジカルプラス下関)

太ももを鍛えるとはどういうことか?

太ももの筋肉

変形性膝関節症の方に「太ももを鍛えましょう」と言われることは少なくありませんが、単に筋肉を強くすること=膝の痛みがラクになるとは限りません。

膝まわりの状態や関節の向き、動かし方によっては、がんばってトレーニングを続けるほど痛みが強くなってしまうケースもあります。
そのため、膝に痛みがあるときの運動やリハビリは、医師や理学療法士などの医療専門職の指導のもとで行うことがとても大切です。

ここでは、太ももの筋肉の構造を簡単に整理しながら、「どのように鍛えるか」「どこに力を入れすぎないほうがよいか」という視点でお話していきます。

大腿四頭筋を構成する4つの筋肉と、大腿直筋の特徴

「太ももの前の筋肉」はまとめて大腿四頭筋(だいたいしとうきん)と呼ばれ、次の4つの筋肉からできています。

  • 大腿直筋(だいたいちょっきん):骨盤から膝のお皿の下あたりまでつながっており、股関節と膝関節の両方をまたぐ筋肉。膝を伸ばすだけでなく、股関節を曲げる役割も持っています。
  • 外側広筋(がいそくこうきん):太ももの外側に位置し、膝の外側をしっかり支える筋肉。
  • 内側広筋(ないそくこうきん):太ももの内側にあり、膝のお皿を内側から支える役割が強い筋肉。膝の安定性にとても重要です。
  • 中間広筋(ちゅうかんこうきん):太ももの中央・深いところにある筋肉で、大腿四頭筋全体を裏側から支えるような役割を持ちます。

この4つがバランスよく働いているとき、膝のお皿(膝蓋骨)がスムーズに動きやすく、膝関節への負担も分散されます。

一方で、筋トレや日常動作の中で大腿直筋ばかりが強く働いてしまうと、膝のお皿を前上方に強く引きつける力が過剰になり、
前側の痛みや、膝に負担のかかる動き方につながることがあります。

特に、重いおもりを使った膝伸ばし運動(レッグエクステンションなど)や、「膝だけ」でがんばって立ち上がる動作では、大腿直筋に偏って負担がかかりやすくなります。
変形性膝関節症の方の場合、この偏りが痛みの一因になることも珍しくありません。

太ももを鍛えるときは、「前側をとにかく強くする」のではなく、大腿四頭筋の4つがバランスよく働いているかという視点がとても重要になります。

膝関節の機能を無視しないことが大切

よくある「太ももの前側を鍛えるトレーニング」は、やり方によっては膝の痛みを強くしやすい運動になってしまうことがあります。

実際の現場でも、変形性膝関節症の方が「太ももを鍛えなきゃいけない」と言われて、
重いおもりを付けた膝伸ばし運動や、回数だけを追いかけるトレーニングを続けた結果、膝の前側の痛みが強くなってしまったというご相談は少なくありません。

この背景には、

  • 大腿直筋が必要以上にがんばりすぎている
  • 太ももの裏側(ハムストリングス)との筋力バランスが崩れている
  • 関節のアライメント(骨の配列)に偏りがあり、力の通り道が歪んでいる
  • 筋肉の硬さによる可動域の低下

といった要素が複雑に重なっていることが多く、「筋力が足りないから痛い」という単純な話ではありません。

そのため、太ももの前側を鍛えるトレーニングを行う場合は、フォーム・負荷量・回数・痛みの出方などを細かく確認しながら、
医師や理学療法士などとよく相談して進めていくことが重要です。

膝の痛みがある状態で「自己判断でがんばるトレーニング」は、かえって症状を長引かせてしまうこともあるため、慎重に考える必要があります。

太ももの筋肉を「前も後ろも」バランスよく使う

ここでお話している「膝を強く使う」というのは、太ももの前側(大腿四頭筋)の中でも特に前面ばかりが頑張ってしまっている状態を指します。

大腿四頭筋

例えば、

  • 膝と足先の向きに大きなズレがある
  • 背骨や骨盤の位置が偏っている
  • 太ももの裏やお尻の筋肉にうまく力が入らない

といった条件が重なると、太ももの裏側(ハムストリングス)が働きにくくなり、その分を補うように太ももの前側が頑張りすぎる状態になりがちです。

ハムストリングス

このような状態で、足におもりをつけて膝を伸ばす運動ばかりを繰り返してしまうと、
前後の筋肉の出力バランスがどんどん崩れ、膝の前側に負担が集中しやすくなります。

大切なのは、

  • 太ももの前側・裏側のどちらにも「適度に」力が入るようにすること
  • 関節の動きやすさ(柔軟性)を確保すること
  • 膝だけでなく、股関節や足首も含めて全体のバランスを見ること

といったポイントを押さえながら、必要なトレーニングを選んでいくことです。

「自分では判断が難しい」と感じた場合は、医師や理学療法士などに相談しながら方向性を決めていくと安心です。

https://shimonosekiphysicalplus.com/kneepain-4/
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まとめ

NG運動イメージ

変形性膝関節症の方にとって、太ももの前側だけを強くする筋トレ(おもりをつけた膝伸ばしなど)は、優先順位の高い運動とは言えません。
行い方によっては、膝の機能をかえってつらくしてしまうこともあります。

「運動のあとに膝の前側が余計に痛む」「がんばっているのにラクにならない」
といった場合、そのトレーニングが今の膝の状態に合っていないサインかもしれません。

まずは、

  • 関節のアライメント(膝・股関節・足首の向き)
  • 筋肉の硬さや可動域
  • 太ももの前後・股関節まわりの筋力バランス

といった土台を整えたうえで、適切な負荷のトレーニングを少しずつ積み重ねていくことが大切です。

「自分でどうにかしたい」というお気持ちはとても大切ですが、
その気持ちを上手に生かすためにも、まずは医学的な知識を持った専門家に一度相談してみることをおすすめします。

関節や筋肉の状態が整ってくれば、その段階で初めて「どの程度の筋トレが適切か」「大腿直筋に偏りすぎていないか」などを確認しながら、
膝まわりに必要なトレーニングを進めていくことができます。

マッサージや電気治療だけに頼るのではなく、ご自身の体に合った運動や動き方の練習を続けていくことが、長い目で見て膝と付き合っていくうえで大切な視点です。

理学療法士としての経験上、変形の程度と痛みの強さは必ずしも比例しません。
体重だけを気にするのではなく、膝まわりの環境づくりと運動の内容を見直すことで、
日常生活を少しでも楽にしていく可能性は十分にあります。

筋トレについては股関節のことも含めて、こちらもご参考にしてみてください。

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理学療法士(Physical Therapist)。
病院勤務時代には、延べ4万人以上のリハビリテーションに携わる。現在は「フィジカルプラス下関」代表として、痛みや動きにくさと向き合いながら生活や競技を続けていくためのコンディショニング支援を中心に活動。地元の中高生からプロアスリートまで幅広くサポートし、山口県スポーツ協会認定トレーナーとして10年以上国スポにも帯同している。

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