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臼蓋形成不全のリハビリがうまく行かず効果を感じにくいのはなぜか?

人工股関節全置換術

リハビリには効果がない?

医療制度上の問題で臼蓋形成不全があっても手術の必要のない方が専門的な股関節のリハビリを受けることはほとんどありません。(ほとんどの場合が手術後に受ける事になります)

術前にリハビリを受けることができても、術後を見越した内容であることが多く、手術をしないで済むためのリハビリではないため、一人ひとりに合わせた個別のメニューを指導されることは殆どありません。

これまで聞いてきたお話だと、殆どの場合は運動内容を記したプリントなどを渡され、なんとなく続けていたという方が多く、中途半端になりがちです。

中途半端なことを継続したまま、痛み止めが欠かせなくなる前に、股関節にかかる負担を減らす姿勢や歩き方、動作のコツを獲得しておくと良いでしょう。

痛みがどうしても取れず手術になった場合でも合併症(特に拘縮による可動域制限)が少なければ早い回復が望めるはずなので少しでもやっておきましょう。

安易にプールで歩いてがんばっているつもりになる

プールは主に下肢にかかる負担を減少しつつ、多くの運動量を確保することが出来る素晴らしいツールだと思いますが、股関節痛の方に必要なの筋力を向上させることは向いているとは言えません。

水の中であっても機能的に問題のある股関節では、運動を正しく行うことは難しく、時間やコストを考えても効率の良いやり方とは言えない場合が多いのです。

自己流や間違ったものにこだわりかえって痛みを作る

股関節は人間の体の中でも非常に自由度の高い関節で沢山の筋肉によってコントロールされているため、筋力の影響を受けやすく、上手に動かすにはとても難しい関節になります。

医療機関やリハビリの現場で指導される筋トレは否定はしませんが、個人差があるため、一般的な筋トレはかえって痛みを作る原因となりやすいと頭の片隅に入れておきましょう。

医療機関で筋力がないと言われて、がむしゃらに鍛えると股関節周囲の動作で使用する筋肉や関節の使い方の偏りがより強くなり、ただでさえ負担のかかっている股関節周囲の筋肉にさらなる負担を与え痛みを強くしてしまうことがあります。

まず筋トレをすると痛む方はやり方を変えなくてはいけないと自覚しましょう。

間違った杖の使い方や杖に頼りすぎる歩行

股関節に痛みがあると、杖を使用するように薦められる事があります。杖は上手に使えば股関節を守ってくれます。

しかしながら、痛みが強い場合必要以上に杖に頼りすぎる傾向があります。

このような状況は杖を持つ上肢(肩・肘・手首)にも負担がかかり股関節にもさらなる負担をかけてしまうため歩行自体を見た目の悪い、いびつなものに変えてしまいます。

杖に頼りすぎると本来使うべき筋肉を効率よく利用できなくなり、たくさん歩く練習をしても全く意味のないものとなってしまいます。

股関節疾患のある方に限らず、生活環境や痛みの程度に応じた杖の種類や杖の使い方がありますが、それをきちんと指導されたことのある方は少なく、実際には杖の長さ、持ち方すらよくわかっていない方もおられます。

杖を持つ手がそもそも違うということが結構多くあるのです。

ここではとりあえず痛む側と反対側の手で杖を持つということを覚えておきましょう。

手術をしないことにこだわったり、あせって様々なことに手を出す

多くの股関節疾患では手術を行わないと取れない痛みがあることも理学療法士として多くの経験から実感していますし、術後劇的に痛みが取れてしまうという効果も私自身よくわかっています。

最終的に手術に至ってリハビリを頑張っているにもかかわらず、痛みが取れず、困っている方も多く担当してきました。

しかしながら、手術をしないということだけにこだわるのではなく、考えられるだけの多くの手段を知っているだけで心の安定につながることが多いので、手術はしないと決めつけて、焦ってリハビリを頑張ることはおすすめしません。

必要な情報はできる限り手に入れ、そのなかで状況に応じて取捨選択し落ち着いてリハビリに取り組みましょう。

姿勢、歩行様式、筋力、可動域制限などがあっても諦めることはありません。手術が決まってからの運動療法も重要です。

術後のリハビリにおいても動けるからと自己流で病院を歩き回ったり、年齢の若い方では杖歩行ができると歩行様式が不十分な状態であってもすぐに退院となります。

早い時期にリハビリに取り組む環境から離れると、徐々に歩行様式が悪化し、痛みが再発し、実用的な歩行量を確保できないなどの問題が出てくることがあります。

とかく早く良くしたい、病院と手を切りたいという勘定もリハビリに落ち着いて取り組めない原因の一つです。

未手術でも手術後でも、がむしゃらに股関節周囲の筋肉を鍛えたり、プールなどで歩いたりしても歩行状態は良くなりません。

まずはある程度の股関節の可動性を確保してから、関節機能の回復のタイミングをみながら適切な負荷をかけ、筋肉を正しく強化することが大切です。

効果が感じられないのは焦りとタイミングが原因です。

落ち着いてとりくめば結果は出ますのでとにかく焦らないように気をつけてください。

記事執筆者
木村柄珠

理学療法士 Physical Therapist
病院勤務時にのべ4万人以上のリハビリを経験。現在フィジカルプラス下関の代表として、痛みに対するコンディショニング、ボディケアを行う。また地元下関の中高生からプロアスリートまでコンディショニング、トレーニング指導、トリートメントも行ってます。山口県スポーツ協会認定トレーナーとして10年以上国スポに帯同。

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