スポーツにおける腰痛予防、昔ながらの腹筋運動には注意が必要です。

この記事の執筆・監修:理学療法士 木村柄珠(フィジカルプラス下関)
野球 スポーツの痛み・成長期のけが
この記事の執筆・監修:理学療法士 木村柄珠(フィジカルプラス下関)

昔ながらの腹筋運動は腰を痛めやすい?

先日、日本バスケットボール協会の記事(朝日新聞デジタル)でも話題になっていましたが、いわゆる「昔ながらの上体起こし」は、腰への負担が大きく、実施しないようにする動きが出てきています。

理学療法士の立場から見ると、上体を大きく起こすタイプの腹筋運動は、腰が過度に曲がりやすくなり、股関節まわりの動きも硬くなりやすいという点に注意が必要です。

特に、部活動やクラブチームなどでスポーツを続けている方は、この点を知っておくだけでも、腰への負担を減らすヒントになります。

一般的に考えられている問題点としては、上体起こしの動きで椎間板へ大きな負担がかかること、さらに腹筋だけでなく他の筋肉も強く働き、「腹筋を鍛えているつもり」が実は別の筋肉ばかり使ってしまっている可能性があることなどが挙げられます。

もちろん、競技の特性やポジションによっては必要なトレーニングもありますが、「何となく昔からやっているから」という理由だけで続けてしまうのは、一度見直してみても良いかもしれません。

なぜ上体起こしで腰がつらくなるのか?

40代以上の方は、「腹筋=上体起こし」というイメージを持っている方も多いと思います。学生時代に回数を競って行い、やればやるほど腰が重くなったり痛くなった経験がある方もいるのではないでしょうか。

今でも、クラブチームや部活動のメニューに上体起こしが残っていることは少なくありません。本来の目的がしっかりしていれば良いのですが、「腹筋を鍛えたいから」とだけ説明され、内容があいまいなまま続いてしまっている印象もあります。

上体を起こすときに、本当に使われている筋肉は?

腹筋

「腹筋を鍛えているつもり」で上体起こしをしていても、やり方によってはお腹にうまく力が入らず、別の筋肉ばかり働いていることがあります。

両膝を立てて、パートナーに足首を押さえてもらいながら上体を起こすやり方では、
肩甲骨が床から離れるあたりまでは、主に上部の腹直筋ふくちょくきんが強く働きます。
しかしそれ以上に起き上がると、腸腰筋ちょうようきん大腿四頭筋だいたいしとうきんなど、股関節を曲げる筋肉が優位に働き始めます。

腸腰筋や大腿四頭筋は、骨盤を前に傾ける(前傾させる)作用が強い筋肉です。この筋肉ばかりを繰り返し使い続けると、腰の反りが強まりやすく、腰まわりへの負担が増えやすくなります。

その結果、

  • 本来鍛えたい腹筋群には、十分な収縮が入りにくい
  • いわゆる「アウターマッスル」が過度に緊張し、腰だけでなく他の部分への負担が増える
  • スポーツ動作の質(キレやしなやかさ)がかえって低下してしまう

といったことが起こりやすくなります。

腹筋群にしっかり刺激を入れたい場合は、下の画像のように「肩甲骨が軽く浮く程度」までで十分です。この範囲でも、お腹にはしっかり力が入ります。

体力にあまり自信のない方やご高齢の方は、「頭を軽く浮かせるだけ」からスタートしていただいても問題ありません。

腹筋

ただし、この方法だけでは、下部の腹直筋には十分な刺激が入りにくいという弱点もあります。

腰を守りながら体幹を整えていきたい場合、下部の腹直筋がしっかり働くことはとても大切なポイントになります。

腰を守りながら下部の腹直筋を鍛える方法

下部の腹直筋を鍛える方法はいくつかありますが、腰への負担をできるだけ抑えたい場合、カラダを大きく起こさずに行うエクササイズがおすすめです。

体幹全体を考えると、カラダを斜めに起こして腹斜筋ふくしゃきんも一緒に働かせる方法も有効ですが、ここでは「腹直筋を意識しやすい方法」をご紹介します。

体幹トレーニング

① 両肘をついて上半身を軽く起こし、股関節と膝関節を90度に曲げます。
② その姿勢から、一度両膝を胸のほうへ引き寄せます。

お腹のトレーニング2

③ 次に、両膝を伸ばしながら、床につかない範囲でできるだけ下ろします。
慣れないうちは、下ろした位置で10秒ほど静止してみましょう。

お腹のトレーニング

膝をしっかり伸ばすことで、下部の腹直筋に刺激が入りやすくなります。この方法だと、腰を無理に反らせることなく、比較的安全に下腹部の筋肉を使うことができます。

もしこの動きが難しい場合は、下の姿勢からスタートしてみてください。

体幹トレーニング

① 仰向けで両脚を伸ばし、両手は体の横へ
② 片足ずつ、膝を伸ばしたまま床から少し浮かせて10秒キープ
③ 左右交互に繰り返す

どちらの方法も、「お腹がしっかり働いている感覚」がつかめると、上体起こしをしていたときとの違いを感じやすいと思います。

特にスポーツをしている方は、一度ご自身の腹筋メニューを見直してみるだけでも、腰まわりの負担が変わってくる可能性があります。

腹筋運動の回数と頻度の目安

日頃あまり運動していない方や、すでに腰に不安がある方は、回数をこなすことを目標にする必要はありません。

勢いよく動かしたり、反動をつけたりすると、かえって腰に負担がかかることがあります。
基本的には10秒程度キープする静止系のトレーニングから始めるのがおすすめです。

※静止している間は、息を止めずに自然な呼吸を続けるように意識してください。
※「いつもと違う嫌な痛み」を感じた場合は、すぐに中止しましょう。

各エクササイズを「10秒×3セット」、週2回程度から始めて、2週間ほど様子を見ながらセット数を少しずつ増やしていくと、カラダへの負担を抑えやすくなります。

あくまでも「腰を守りながら体幹を整えること」が目的ですので、回数を増やすことだけにこだわる必要はありません。
競技レベルの高いアスリートの方では、必要な負荷や内容が変わる場合もありますので、その点はご注意ください。

まとめ 〜腹筋運動は「やり方」で大きく変わる〜

ここまで、腰への負担を考えた腹筋運動の考え方と、その一例をご紹介しました。実際には、腹筋運動だけでなく、ストレッチや日常の姿勢・動作のくせなど、腰を守るために考えたい要素はたくさんあります。

今回のような腹筋エクササイズを続けていくと、下腹部だけでなく、股関節まわりの動きが少しずつスムーズになってくる方もいます。ストレッチをしても伸びにくかった部分が、「先に腹筋をしてからのほうが動きやすい」と感じるケースもあります。

特に、スポーツをしていて体力には自信があるのに、腰の違和感が気になる方にとっては、今回の内容がエクササイズを見直すきっかけになるかもしれません。

一般の方でも、「腰が気になるから腹筋をしているけれど、方法が合っているか不安」という場合は、ぜひ一度やり方を見直してみてください。

フィジカルプラスでは、競技レベル・年齢・日常生活の状況に合わせて、腰への負担を抑えながら行う体幹トレーニングやスポーツコンディショニングのご相談もお受けしています。

詳しくは、スポーツコンディショニングのページもあわせてご覧ください。

https://shimonosekiphysicalplus.com/top-page/menu/conditioning/sports-conditioning

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理学療法士(Physical Therapist)。
病院勤務時代には、延べ4万人以上のリハビリテーションに携わる。現在は「フィジカルプラス下関」代表として、痛みや動きにくさと向き合いながら生活や競技を続けていくためのコンディショニング支援を中心に活動。地元の中高生からプロアスリートまで幅広くサポートし、山口県スポーツ協会認定トレーナーとして10年以上国スポにも帯同している。

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