変形性膝関節症は、膝の軟骨がすり減ることで痛みや動かしにくさが出てくる、身近な関節のトラブルです。
膝の痛みが強い方の多くは、かかとの骨が内側または外側へ大きく傾き、その結果として“膝と足の位置がずれた状態”で毎日歩いたり立ったりしています。
この「ずれ」が続くことで、膝への負担が増えやすくなります。
そのため、
「高価なインソールを買ってみた」
「オーダーメイドのインソールを勧められて作った」
という方も少なくありません。
もちろん、それ自体が悪いわけではありません。ただ、購入する前に「足の当たり方を少し変えるだけで楽になるかどうか」を、ご自身で試してみる余地もあります。
膝の痛みを考えるうえで、“かかとの位置”はとても重要です。
日常的に痛みがある方でも、かかとの傾きを少し整えるだけで、歩きやすさが変わる方もおられます。
そこで今回は、
数百円程度のインソールと布製ガムテープを使って、かかとの角度をやさしく調整する方法を、写真も交えながらご紹介します。
かかとの位置と膝の関係
変形や痛みの有無にかかわらず、かかとの位置は足全体のバランスと深く関係しており、立位や歩行時の体重のかかり方を左右する重要なポイントです。
とくに変形性膝関節症の方では、この「かかとの傾き」に特徴的な崩れがみられることが多く、そのままにしておくと膝への負担をさらに大きくしてしまう場合があります。
ここからは、
かかとの傾きがどのように膝の痛みに影響するのかを、イメージしやすいように写真を見ながら確認していきましょう。
ニュートラル

理想的な、かかとの位置です。直立して足に体重をかけたとき、すねの骨とかかとを縦に結ぶと、かかとの骨がまっすぐ、もしくはごくわずかに内側へ傾いている程度になります。
回内足

回内足では、膝関節の内側に負担がかかりやすく、変形性膝関節症の痛みが出やすくなることがあります。
直立して足に体重をかけたとき、すねの骨とかかとを縦に結ぶと、内くるぶしが内側に倒れ、後ろから見るとかかとの骨も内側に倒れ込んでいる状態です。
その結果、歩行時の衝撃吸収がうまく働かず、足裏の一部に負担が集中してしまいます。扁平足で土踏まずが低下している方に多く見られるタイプです。
回外足

回外足では、膝関節の外側に負担がかかりやすく、変形性膝関節症の方では外側の痛みが続きやすくなる場合があります。
直立して足に体重をかけたとき、すねの骨とかかとを縦に結ぶと、外くるぶしが外側に倒れ、後ろから見るとかかとの骨も外側に傾いている状態です。
このタイプでは、歩くときの衝撃が足裏の外側に偏りやすく、地面をしっかり踏めていない感覚になる方もいます。
かかとの位置を自分で確認してみましょう
- 鏡の前に立つ
- 全身が映る鏡の前で、後ろ向きにまっすぐ立ちます。
- 後ろから足元を撮影する
- スマートフォンで、かかと~ふくらはぎが映るように後ろから写真を撮ります。
- ご家族に撮ってもらうか、セルフタイマー機能を使うと確認しやすくなります。
- かかとの傾きをチェックする
- 写真や鏡を見ながら、かかとの骨が内側・外側のどちらかに倒れていないか確認します。
- 左右のかかとを見比べて、傾きや高さに差がないかも一緒にチェックしてみましょう。
ポイント
- 力を入れすぎず、できるだけ自然に立った状態で確認します。
- 「なんとなく内側に寄っている」「片側だけ外側にずれている」など、ざっくりした印象で構いません。
- ご自身で判断しにくい場合は、医師や理学療法士など専門家に相談することをおすすめします。
インソールを少しだけ工夫してみましょう
準備するもの
- 布製ガムテープ(重ね貼りできるもの)
- ハサミ
- 靴の中敷きが取り外せる場合は、その中敷きを使います。
- 取り外せない場合や、別の中敷きを試したい場合は、100円ショップなどで市販の中敷きを用意して使いましょう。

基本の作り方
- ガムテープを重ねて厚みを作る
- ガムテープを10cmほどの長さに切ります。
- 同じ長さのガムテープを4枚ほど重ね貼りし、少し厚みを出します。

重ねたガムテープを、縦に三等分するイメージで細長く切ります。

回内足(かかとが内側に倒れやすい場合)の調整
インソールを裏返し、かかとの形がわかるようにしておきます。


- 細長く切ったガムテープを、かかとの後ろ側から内側に向けて貼り付けます。
- カーブに沿わせるため、ガムテープに数カ所切れ込みを入れておくと、しわになりにくくきれいに貼れます。
回外足(かかとが外側に倒れやすい場合)の調整

- 先ほど作ったガムテープの細長いパーツを使います。
- かかとの後ろ側から外側に向けて貼り付けます。
- こちらも、切れ込みを入れながら貼るとインソールのカーブになじみやすくなります。
布製ガムテープを使うときのポイント
- ガムテープは布製のものを使うと、はがれにくく、歩いている間もズレにくくなります。
- 最初から厚くしすぎず、少しずつ厚みを調整しながら足裏の感覚を確かめましょう。
- 「なんとなく楽かも」という程度から始め、痛みや違和感が出ない範囲で調整していくのがおすすめです。
まとめ
今回ご紹介した方法は、変形性膝関節症の方でも、ご自身のかかとの傾きに合わせてインソールを手軽に調整してみるための一つの工夫です。
まずは短い時間から試してみて、歩きやすさや膝への負担の感じ方に変化があるか観察してみてください。
ただし、試している途中で痛みや違和感が強くなる場合は、すぐに中止してください。
今回の貼り方は、市販されているカップインソールに近い働きをねらったものです。
違いとしては、
- かかと周囲だけに絞って調整できる
- 左右の足で厚みを変えるなど、個別に微調整しやすい
といった点があり、とくに左右で変形の程度や痛み方が違う方には、試しやすい方法です。
ご自分で工夫しても不安が残る場合や、続けても痛み方があまり変わらない場合は、無理に続けず専門家に相談してください。
今回の内容が、変形性膝関節症による膝の痛みと向き合うときのヒントとなり、日常生活の中で「少し歩きやすくなった」と感じるきっかけになればうれしく思います。
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