変形性股関節症の痛みで困っている方が杖や減量は本当に必要かどうか考えてみる

記事執筆者
木村柄珠

理学療法士 Physical Therapist
山口県体育協会認定トレーナー
フィジカルプラス代表
毎年国体山口県チームに帯同しています。

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杖と減量についてどう考えるか?

変形性股関節症の方の場合、歩行補助具(杖)や体重減少は股関節にかかる負担を軽減することは確かですが、正しく理解しないと不要な筋力低下や股関節の可動性の悪化を引き起こす可能性があります。

変形性股関節症と診断を受けた場合、素早く歩行補助具を使用したり、体重減少に努める前に、以下を確認することをお勧めします。

筋肉と関節可動域に注意を向ける

変形性股関節症と診断された場合、手術をするほどでないと言われたら、杖や減量について指導されることがあると思います。

実際には杖の仕様や減量よりも先に早い段階で痛みの度合いに注意しながら関節可動域が急激に狭くならないようにすることが大切です。

正しく股関節周囲の筋力や筋肉のバランスを整えていくということがポイントになるということを頭の片隅に入れておくと良いでしょう。

痛みを恐れすぎてカラダをかばうのはやめましょう

痛みが強い場合は、痛みを恐れるばかりに杖をつくことで必要以上に股関節をかばってしまい、かえって本来必要な関節や筋肉の機能を失ったり、杖をつく手や肩に痛みが出ることがあります。

かばいすぎるとデメリットのほうが多くなるので注意が必要です。

減量は気にしすぎないで良い場合が多い

減量についても、股関節に係る負担は確かに減少しますが、よほどの肥満体型でなければ、あまり気にしすぎる必要はありません。

体重よりも大切なことは普段からの姿勢や歩行様式などに注意を向けることです。

股関節の痛みの状態は人によって全く違うので人の言うことは当てにならない

股関節の痛みの状態は人によって大きく異なりますので、他人の話は参考にはなりません。

変形性股関節症を抱えている人では、実際に体重が軽いが痛みが強い場合や、体重が重く変形も激しいが痛みが少ない人もいます。

変形性股関節症といっても症状は多種多様で、痛みが出る部分も人によって異なります。

個人差が多いため、単純な鍛え方で良くなることはまずありません。

例えば、筋力を減らさずにプールで運動することで改善すると聞くこともありますが、実際にはあまり効果がないことのほうが多いです。

理学療法士の経験から言うと、長期的に特有のかたちで歩いてきた人ほど、脚長差や姿勢に関する問題が残ってしまうことが多いです。

「左右で足の伸び方が違う」「カラダが揺れやすい」などの状態が気になる場合は、すでにカラダを特有のかたちにしている可能性があります。

周囲の人の意見は重視すべきですが、まずは専門家の意見を聞くことが大切です。

杖のつき方について確認しましょう

初期の段階で杖をつくように整形外科やリハビリ施設で指導を受けることがあるかと思います。

一般的にはT字杖をと呼ばれる以下のような杖をつくことが多いと思いますが、杖の高さであったり、持ち方、どこの位置につくのかということまでしっかりと指導されていることが少ないのが現状です。正しく使えると、杖は武器になります。以下でチェックしていきます。

杖の高さ

教科書的には肘を30度に曲げたときの高さ、もしくは股関節の大転子の高さと言われますが、一般の方には分かりづらいと思います。このような合わせ方だと、背骨が曲がったりしている年齢層の方では杖が長すぎるということが起こります。

わかりやすい方法としては立った状態で腕時計をつけた位置に合わせるということになります。

よくある杖の間違った持ち方

杖の付き方

人差し指まで杖の持ち手を握りしめてしまう。このようにすると手首が不安定となり、必要以上に手に力を込めてしまい、腕や肩に痛みが出てしまいます。

杖の付き方

杖を握る際に中指まで杖の前方を握り込む。これは高齢者に多く、杖に必要以上に頼っている場合に多くみられます。これも腕や肩に痛みが出てしまいます。

杖の付き方

親指の付け根が杖の持ち手のくぼみより後ろにある。これも高齢者に多く、必要以上に杖に頼っている場合に見られます。

正しい杖の持ち方

杖の付き方

親指の付け根を杖の持ち手のくぼみに合わせて人差し指を杖に添えます。場合によっては人差し指を少し前に持っていってもオッケーです。

このような持ち方をすると必要以上に杖に頼りすぎることなく、適度に力が入ります。今現在杖をついている方は持ち方をしっかりと確認してみてください。

杖をつく位置

杖の付き方

大まかにですが、杖をつく位置はつま先の前15センチ程度、横15センチ程度を意識してみてください。後ろになると杖に頼りすぎるようになるので特に前方へはつくように心がけてみてください。

まとめ

以上簡単にですが杖について述べてきましたが、ここで述べている以外にも杖をどちら側につくか、つくタイミングなど様々な要因があります。杖をつくかつかないかは個人個人の体の状況によって違ってきます。必要以上にかばったり、体重を落とすことはおすすめしません。

はっきりと理解していただきたいのは痛みをかばうために杖に頼りすぎないことです。そのためにも一度自分自身の杖について確認していただければと思います。

ご不明な点はメール等でも構いませんので、フィジカルプラスまでご相談ください。

よくわからない場合は専門家に相談することが大切です。

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